第三のギデオン

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全部読んだので記録。

ロベスピエールの顔芸が怖い気がするが。

フランス革命は比較的俺も強いジャンルだが(18世紀周辺が専門なんで)、味付けが全く他の作品と違って良かった。

フランス革命と言えば悲劇に見舞われたフランス王家を中心に描くもんだと思っていたのだが、そこからして違う。

主人公はギデオンという平民(貴族に買われた平民の子)。対になる主人公は、ギデオンと一緒に育てられた貴族のジョルジュ。

ふたりならではの「フランスを救う」という思想を見ながら革命を走り抜ける構成になっているのだが、これがまた人間ドラマを折り混ぜてきて構成がうまい。

軸は何本かあるんだが、貴族と平民、真実と嘘、男と女、父と子、生と死。

どれもこれも根底にあるのは人間の「愛されたい」終わりのない欲求だった。

フランス革命だけに最後はルイ16世の処刑と誰もが知っているのだが、勢いで国王の処刑までいってしまった群衆の集団的熱狂ともいえる表現が見事だった。最後まで矜持を持ちながら断頭台に足を向けた国王夫妻が冷静で群衆と対照的で。最後の見開きはカラーでみたかった。

ただ、ロベスピエールの顔芸が怖い。

◆◇◆

ルイ16世マリー・アントワネットに関しては色々な書物にも登場するが、ここまで魅力的に描かれたのは初めて見た気がする。

ルイ16世は錠前を作るのが趣味というのは有名な話だが、それを忍耐力のある人物に昇華している。マリー・アントワネットは自由奔放なれどかなり賢い女性として有名だが、本当に自由奔放かつ賢い女性。ただ「贅沢ばかりの女の子」ではなく一国の王妃であること、母であることを第一に据えた芯の強さが描かれていて好印象だった。断頭台での最後の瞬間、そして本編最後のページはとても有名なセリフで締めくくられており、全体的に暗い印象が強かった本編の印象を軽いものにしてくれている。

単純に、美しいフランス貴族を描くならベルばらに軍配が上がると思うが、フェルゼンの扱いしかり、歴史のくっそ凄惨な所も含めて俺はこちらの方が肌に合っていると感じた一作。

 

俺だってたまには頭使ってマンガ読むんすよ。